位置決め機構を搭載したリアディレイラーポジトロン

位置決め機構を搭載したリアディレイラー
ポジトロン

位置決め機構を搭載したリアディレイラーPOSITRON(ポジトロン)。従来、変速機はレバー操作のストローク加減が難しく、一定の経験をもとに、操作への勘と慣れが必要とされていました。しかし、位置決め機構を搭載したポジトロン・システムの開発以降、シマノは「誰もが使いやすく、より多くの人に自転車を楽しんでもらえる」環境の実現に大きく貢献しました。またこういったシステムの開発が進む中、パーツ単体としての機能向上をめざす開発から、パーツ同士の相互機能の関係を重要視したシステム・コンポーネンツの思想へとつながっていきました。

STORY

自転車の付加価値を上げる変速機のさらなる普及をめざして

1970年代のはじめ頃、変速操作は変速機の音を聞きながら感覚を頼りにシフトレバーのストロークを調整する必要があり、一般のユーザーにとっては扱いが難しいものでした。また、変速機はスポーツ車で使われるもの、という認識が広まっており、スポーツ車以外での変速機の普及が進んでいませんでした。そうした中、1974年にシマノは誰にでも使いやすい変速システムに焦点を当ててPOSITRONを発表。リアディレイラー(後ろ変速機)に変速位置決め機構を設けることで、シフトレバーの微調整をせずに確実に変速が行えるようになりました。これは変速機をうまく扱えない一般ユーザーに大きな福音をもたらし、以降、あらゆるシーン・トラブルを想定し、スムーズかつ安全に変速が行える技術が次々と生まれていきました。こうした開発のおかげで、変速操作は子どもにもできるほど容易となり、変速機へのハードルは格段に下がりました。1970年代後半、POSITRONはジュニア向けスポーツ自転車に搭載されるようになり、業界の中では子ども用の変速機という印象でした。それでもPOSITRONを通じて開発された技術の多くは、ヨーロッパなど気候の厳しい地域での使用にも耐えうることが理解されはじめると、ユーザーはもちろん、販売店やメーカーからも重宝されるようになりました。

進化を遂げ続けた位置決め機構は、変速システムSISへ

シマノは1960年代から、スポーツ自転車のさらなる普及を目指し、あらゆるユーザーにとって快適で安全な変速システムの開発に力点を置くようになりました。1974年発表のPOSITRONは変速位置決め機構のポジトロン・システムを搭載。1976年発表のPOSITRON Ⅱでは、自転車が止まっている時にあらかじめギアの変速を行っていれば、ペダルの踏み込みとともに変速が行われる予約変速機構PPS(POSITIVE PRE SELECT SYSTEM)を組み込みました。これによりローギアでの発進や坂道での漕ぎ出しが容易かつ安全に行えるようになりました。また、POSITRON Ⅱではそれまでのワイヤーに替わって鋼線ケーブルを採用し、ワイヤーの弱点であった伸びや錆びによる変速性能の低下を防ぐことに成功。しかしながら、鋼線を使用したプッシュ・プル機構はコスト面での課題のほか、ケーブルの硬さからフレームへの取り回しに難渋してしまうなど、不便な点がありました。そのため、1978年発表のPOSITRON Ⅲでは、通常のワイヤーへと変更。そしてシフトレバーに位置決め機構を搭載し、その後のSISの原型となるものが完成します。しかしながら、当時の変速システムとしては性能が追い付かず、満足のいくものではありませんでした。

そのため、1982年に発表されたNEW POSITRON(PV11)ではシフトレバーとリアディレイラーの両方に変速位置決め機構を取り付けました。しかし、相互の同調性が乏しく、レバー操作が重たくなるなどの課題を残しました。これらの問題点は1983年発表のNew POSITRON(NP11)で解決しました。リアディレイラーに新しく開発したダブルサーボパンタ機構を搭載し、各段に変速性能が向上。レバーのみの位置決め機構で、確実な変速が可能となりました。この製品の誕生が、その後のSISシステムの原点となります

SERIES

※一部のみ掲載しています