DURA-ACEの技術を継承する中核グレード

DURA-ACEの技術を継承する中核グレード

SHIMANO ULTEGRAの前身にあたるSHIMANO 600は、DURA-ACEに次ぐコンポーネンツとして登場しました。当時スポーツサイクルというと、レース、もしくはツーリングに二分され、SHIMANO 600はその双方に最適なコンポーネンツを提供したのです。また、ヨーロッパへ更なる販路を広げようとしていたシマノにとって、SHIMANO 600は挑戦的かつ中核的な存在であり、DURA-ACEに次ぐミドルグレードの価値を印象づけるものでした。その思想は現在まで引き継がれ、SHIMANO ULTEGRAは最先端の技術とデザイン、シマノの思想を体現する高級ロードバイク用コンポーネンツとして、世界中のあらゆるシーンで愛されています

STORY

ヨーロッパ市場でシマノの名を響かせたSHIMANO 600の存在

DURA-ACEに次ぐロードバイク用コンポーネンツであるSHIMANO ULTEGRAは、プロ選手が使用する最先端の技術をより多くのサイクリストが使いやすい形で継承しています。

前身であるSHIMANO 600はヨーロッパへ進出したシマノにとって、ミドルグレードの存在価値を確立し、市場に強くその存在を示すことに貢献した製品です。

1973年、最高級レーシング用コンポーネンツであるDURA-ACEを発表したシマノでしたが、ヨーロッパの自転車部品市場においてその地位を確固たるものにするには、まだ多くの課題を抱えていました。その一つがマーケティング戦略における情報不足です。当時、シマノが展開していた製品の多くはマスマーケットで売られる普及価格帯の変速機などであったため、レース用部品であるDURA-ACEとの間には、製品ラインナップに大きなギャップが生じていたのです。「誰でもプロと同じ製品を使いたいと思うのではないか」―シマノはDURA-ACEの最先端の技術を採用しつつ、誰の手にも扱いやすいミドルグレードとなるコンポーネンツの必要性を検討し、製品化を決定。しかし、情報の不足により具体的なコンポーネンツとしてのイメージやデザインが定まらなかったこともあり、そのネーミングもナンバリングをそのまま採用した「SHIMANO 600」とし発表します。マーケット戦略の策定が十分でないまでも、軽さと美しさに徹底的にこだわり、またその機能性とコストパフォーマンスの高さからヨーロッパで高い評価を受け、好調な売れ行きを見せました。また、シマノは普及価格帯自転車の部品、というイメージが強かったアメリカでもSHIMANO 600は大いに認められ、小売店や専門店における扱いも増加していきました。

SHIMANO 600 の果たした大きな役割

現在の堅牢かつ精巧なシマノのコンポーネンツを支えるのは、長い歴史の中で生まれた技術の数々です。1975年に発表された初代SHIMANO 600はその開発を通じて、現在当たり前とされている製造技術の多くが築かれました。アルミニウム素材を採用し、軽量かつ高級感あるコンポーネンツを、ハイコストパフォーマンスで実現したSHIMANO 600は、当時からシマノが得意としていた鍛造技術やプレス加工に加えて、表面の研磨からアルマイト処理、樹脂メッキの最適化、意図的に凹凸を作り出す技術など、数えきれない試作を繰り返しながら生まれました。

初代シリーズはレーシング用・ツーリング用の2モデルで販売されました。1978年発表のSHIMANO 600 EXシリーズではヨーロッパのハンドメイドフレームにマッチングするアラベスク(唐草模様)デザインが各パーツに施され、より完成車との一体感を醸成しました。1980年発表のSHIMANO 600 AXシリーズはエアロダイナミクス技術を取り入れ、DURA-ACEを筆頭とする他のシマノコンポーネンツと歩調を合わせ、空気抵抗に対する挑戦をしました。1983年には、AXシリーズの反省を生かし、基本機能に忠実に、そして感性の時代にふさわしいデザインの仕上がりにもこだわった高級感のあるNEW SHIMANO 600 EXシリーズを発表。コンポーネンツとしての普遍的な美しさを体現しました。翌1987年には、SHIMANO 600 ULTEGRAとしてフルモデルチェンジを果たし、シリーズのイメージを刷新。ロゴにシマノのトリコロールをあしらい、新しいレーシングイメージを創出しました。その後STI思想を継承するなど様々な進化を続けましたが、1997年のモデルチェンジに伴い、600としてのネーミングは終わりを迎えました。DURA-ACEの最新技術を踏襲し、多くのライダーに本格的な自転車の楽しさを普及したSHIMANO 600は、開発当初から続く理念を今なお継承しています。

SERIES

1975
SHIMANO 600 シリーズ
DURA-ACEの発表後、シマノの次なる課題はヨーロッパという未知の市場におけるシマノブランドの確立でした。ジュラルミンに代わり、アルミニウムを採用したSHIMANO 600は鍛造技術に加えて、アルマイト処理や樹脂を用いたアルミ風のメッキ加工といった工夫を各所に凝らしたことで、軽量かつ洗練されたデザインのコンポーネンツとして開発されました。しかしながら、コンポーネンツとしては、一部既存の製品の組み合わせといった域を出ませんでした。
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1978
SHIMANO 600 EX シリーズ
クロモリフレーム全盛期、ヨーロッパのハンドメイドフレームにマッチするデザインを目指し、SHIMANO 600 EXには随所にアラベスク(唐草模様)のデザインが採用されました。同時に、ヨーロッパのメカニックからフィードバックを受け、チェーンを切らずにワンタッチでリア変速機を取り外すことのできる「ハッチプレートメカニズム」や、DURA-ACEにはない幅広いギア比を選択できるカセットタイプのフリーホイールハブといった技術を取り入れ、外観だけでなく機能面においてもユーザーの目線に立った利便性の高いコンポーネンツとなりました。
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1980
SHIMANO 600 AX シリーズ
SHIMANO 600 にも、エアロダイナミクスを投入。トップレーサーだけでなく、より多くの人にもエアロダイナミクスの効果を提供しようとしました。しかし、この思想の実現はDURA-ACEと同様、成功したとは言えませんでした。
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1983
NEW SHIMANO 600 EX シリーズ
“高感度・高機能”をコンセプトに、コンピューターシステムを用いて設計されたNEW SHIMANO 600 EXは、特にデザインに力を入れ、機能性だけでなく高い品質を視覚的に演出することに成功。「シマノデザインの原点」と評されています。欧米の市場において、レーシングモデルはハイエンドモデルと捉えられていたそれまでの価値観を覆し、シマノの存在価値を改めて示すことができました。また、この成功はのちのNEW DURA-ACE(7400シリーズ)の礎ともなり、その後のシマノの製品開発に大きな影響を与えました。
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