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実物との対話。

様々なデザイン創造のプロセスの中で、私たちが特に大事にしているのは実物のモックアップです。3DCADを用いたモデリングは形状の精度を高めるためには欠かせない存在であり、テクスチャーや彩色の検討においても、3D上でリアルな再現が可能です。

しかし、実際の製品が存在するのは現実の空間であり、私たちはそこにあるものの量感や質感を、刻々と移ろいゆく周囲の環境や状況とともに認識し、その美しさや世界観、機能や品質など、数多くの印象を一瞬のうちに感じ取っています。

さらに、私たちが手掛ける製品のほとんどは、ただ空間に置いて使われるのではなく、あたかも身体の一部のように扱われるものであるだけに、 “肌感覚”が非常に重要です。そのため、私たちはデザインの初期段階から立体を触り、思い描くイメージを自身の手で削り出し、塗装で色を乗せながら大まかな方向性を見定めています。

また、デザインが概ね完成した最終段階においても、試作品をフィールドへ持ち込み、磨き抜かれた金属面が陽光を受けて輝くときの表情や、塗装面が周囲の自然を映し込んだときの色味の変化などを検証しています。これらのプロセスは、その製品の存在感を高め、美しいプロポーションや風合いをつくり上げていくためになくてはならないものだと考えています。