TOP INTERVIEW

トップインタビュー

代表取締役社長

島野 泰三

自転車業界・釣具業界におけるシマノの役割とは何だと考えますか?

新卒の採用面接などでよく聞かれることですが、釣り業界全体、自転車業界全体を牽引していくリーディングカンパニーとしての立場を世に示していくことが、シマノの1つの大きな役割です。単にものをつくるだけではなく、製品を通して釣り文化と自転車文化を皆さんに知っていただき、世の中でいかに醸成させていくかが、この会社の1つの存在意義であり存在価値だと感じています。 どのようにして業界を牽引していくリーディングカンパニーになり得るかを考えることがシマノの大切な役割であり存在価値だと感じており、社員に向けて話すときも常にそのことを念頭に置いています。

リーディングカンパニーとは具体的にどういうものですか?

商売だけを短視眼的に考えるのではなく、ある部分では縁の下の力持ちとして、数は売り上げに対して非常に微小であったとしても、釣り業界を牽引していくためには必要な製品を提案するとか、実際にはあまり数は出ない自転車部品であってもつくり続けるといったことが、業界を支えていく上でシマノの責務だと考えてやり続けています。 最近の事例では、2025年末に最先端技術ということで発売したAIの変速機能を搭載したQ’AUTO (クォート)などは、数量的にはあまり出ていません。また、国内で言うと競輪用の部品なども数は知れていますが、つくり続けています。ほかにも、一部のお客様が非常に楽しまれているようなニッチな部品であっても、自転車を楽しんでいただける限りは提案し、つくり続けていく。そうしたことを継続していくことが非常に重要だと思います。 釣りでも同じです。釣種によっては限定的なお客様が愛用されている製品もあり、それについては新製品をどんどん出さないまでも、ずっとつくり続けています。そもそも釣り文化は釣種が非常に多いので、ものによっては廃れてしまいます。だから、釣りを楽しまれている方々を落胆させないために、つくり続けることを大事にしています。

社長は釣りをされると思いますが、自社製品の使い心地はいかがですか?

釣りはよくします。特にマグロ釣りは10年以上しています。 2026年2月に発売する釣具のサンプルを、その何か月か前に使いました。開発の人たちは不完全だから使わないでほしいと言っていたらしいですが、無理を言って持ち出して、気持ちよく170kgのマグロを釣り上げることができました。シマノの竿もリールも着実な進化を体感でき、非常に楽しい釣りができました。

シマノの掲げる「こころ躍る製品」の意味について教えてください。

卓越した企画力・開発力・デザイン力・製造力をベースにして、精緻な感性を活かして創り出す製品。自転車に乗られるお客様、釣りを楽しまれる釣り人のお客様を笑顔にさせる。そういうものがこころ躍る製品だと私は思っています。

お客様に笑顔になってもらうために大切なことは何ですか?

「Beyond Gears, to the Senses」(部品を超越して人間の感性に訴えかける)という言葉を、2025年末のグローバルの大きな会議から使っています。 自転車で言うと、シマノは自転車ではなく自転車部品のメーカーです。ただ、リアディレーラーやブレーキなど単独で部品をつくっているわけではなく、自転車全体を見据えて、自転車をいかに楽しい乗り物にするかという原点に返って、その視点からものを見て部品をもっと提案していきましょうということです。 釣りで言うと、船や川などどういう形であっても、竿を出して、糸を通して魚と対峙するのが釣りですが、その行為自体だけが釣りではありません。釣行の前日に準備をする時点から、もう釣りは始まっています。実際に1日か何日か釣りに行き、帰ってきて、釣り道具の手入れをします。これも1つの釣りです。そのように前後も全て含めて全ての場面で楽しめるような釣道具を提供していこうということです。 そういうことを説明すると長くなるので、「Beyond Gears, to the Senses」という単純な言葉で表現しています。これは製品を表すだけではなく、それが1つの文化だと考えています。シマノ制作のTV番組『釣り百景』や『おとな釣り倶楽部』では一時期、釣行後の魚の料理まで紹介していました。その流れ全てが釣りであり、その全てに対して製品を売っていきましょうと言っています。まさか包丁まで売る気はないですが(笑)、実際に釣具事業部もそのように動いてくれています。 自転車部品も、自分の担当がディレーラーであれば、どうしてもそこに没入したものづくりをしてしまいます。そうではなく、自転車全体を見据えてどういう部品をつくれば楽しい自転車ができるかと考えてもらいたいのです。もちろん、つくる人も楽しんでほしい。もっと広い視野で、自転車全体あるいは自転車に乗ってもらっているシーンを思い浮かべながら設計をしてほしいと思います。

シマノの企業文化について教えてください。

シマノの企業文化を象徴する言葉は、「和して厳しく」が一番しっくりくると思います。極端な話、人間なので怒鳴り合っていた人たちがその日のうちに仲良くなることはないかもしれませんが、仕事では厳しいことを言っていても、機会があれば楽しく話ができるという関係は持ちながら、共に仕事をする。そこの線引きがしっかりできている会社ということを、私は非常に大事にしているつもりです。 特に最近はキャリア採用が増えてきていますが、いろんな企業から転職してきた人たちが、「シマノは役員と社員の距離が非常に近い」と言っています。最近はそういう企業も増えてきていますが、そうでない企業もたくさんあります。 私自身、普通に社員を「飯食いに行こう」と誘って、そのへんで焼き肉を食べています。誘われた方はどう思っているか、ひょっとしたら「かなんなぁ。けど旨い肉やからええか」と思っているかもしれませんが、そういうことを普通にできる環境、そういうことが奇異に見られない企業文化があると思います。「社長に呼ばれたら怒られるのかな」みたいな感じではなく、ただ、お酒を飲みながら時にはくだらないことも話して、焼き肉をつついているというのがシマノの1つの企業文化です。ただし、仕事に関しては厳しくものを言いますし、ときには叱責もします。 エレベーターで一緒になったら気楽に話しかけ、社員からも話しかけられます。過去を遡ってもそうだったなと思います。創業以来そういう人は多かったと思います。そういうことが基本的にあり、上司と部下が気さくに何でも言える関係はあると思います。相手は気を遣ってくれているでしょうが、普通の上場会社の役員と従業員の会話ではないと思います。この環境にはいい面も悪い面もありますが、私はそのいい面を伸ばしたいと思っています。

シマノが大切にし、これからも続けていきたい活動はありますか?

自転車では「シマノ鈴鹿ロード」、釣りでは「シマノジャパンカップ」をそれぞれ約40年継続開催しています。いずれも、製品を売るだけではなく、シマノ製品を使って楽しんでもらえる場所を提供したいというのが最初の考えでした。 シマノジャパンカップは一般のお客様の中でもかなり上級者を対象とし、地方大会から準決勝、決勝とやるトーナメントです。一方、自転車は、特に日本国内ではスポーツ自転車の文化が元々あまり発達しておらず、良くも悪くも軽快車が中心です。それに対して、こんな遊び方があるんだよという提案をお客様に知っていただくために始めたのがシマノ鈴鹿ロードです。 こういうことを企業がする場合、広告代理店に丸投げすることが多いですが、シマノは最初から、今は規模が大きくなって全部を社員がすることはできなくなりましたが、社員が手づくりで実施してきました。鈴鹿ロードは、今はなくなりましたが兵庫県三田のグリーンピア三木という施設で開催し、社員が警備や審判など全てをやったのが始まりです。 これはたまたま日本の例ですが、そういうことを通じて、釣り文化・自転車文化を醸成と言うとおこがましいですが、こういう遊び方があるよ、もっと卓越した釣りの技術を磨きませんか、ということを牽引していこうという試みです。

そうした活動は最初にお聞きした業界におけるシマノの役割とつながっていますね。

そうです。うちがやっていることは突拍子もないことではなく、1つのことです。遊ぶ機会を提供しているのです。シマノジャパンカップは日本一を決めるトーナメントなので、参加者の視線は鋭くなっていますが、社員が釣りに行って乗合船でシマノとは違うお客様と乗り合わせて、うちの商品を使っていただいて釣り上げると、この竿がどうとかリールがどうとか、この魚が釣れたと仲間同士、笑顔で話されている場面を見ると、メーカー冥利に尽きるということです。自転車も同じです。それがこの会社の一番いいところでもあるので、そこは残しておきたいし、そのために働いてほしいと思っています。

社長イメージ 社長イメージ

シマノがこれから目指すものづくりの方向性について教えてください。

最初に話しましたが、現存する残しておきたい自転車部品にしても釣りの種類にしても、商売に関係なくつくり続けながら、小さな次のエポックな製品になり得ると思われる製品。それを実際に業界が熟成し、かみ砕いて味わってくれるのかなと思われる製品を提案していきたいと思っています。 Q’AUTO もまだまだ台数は少なく、まだ次々とこれにまつわる製品も出てきます。うちの努力もまだまだ足りないので、今後さらにいろんなことを仕組んで行き、世の中に認知を拡げていくことが1つの大きな目標です。認知してもらった上で、私どももいろいろ提案していますが、実際どういう形で完成車として世に投じてくれるのか、お客様である自転車完成車メーカー様と一緒にやっていくことを含め、特徴あるものづくりをしていきたいと思っています。 釣りも、タイラバを始め、シマノの新しい提案が世界に広がった釣りも多くあるので、それを繰り返していきたいと思います。そのほか、タングステンなどの金属の塊をいろんな色に塗って、水の中でチラチラ泳がせるジグを使った釣りがあります。特に青モノの魚たちがそれに反応してリアクションバイトし、それを釣り上げます。ジグは元々漁具ですが、一般用に置き換えて、うちの企画の社員がアメリカに持ち込んで流行らせました。 日本は釣りでは世界超最先端です。鯛の仕掛けだけでも日本に10個ぐらいあります。世界を見ても1つの魚に対して何種類もの釣りがある国はほかにありません。日本には文化として元々あるのです。また、釣具店は、1人のお客様に何種類もの釣具を買ってもらおうという企みもあり、さらに釣りを細分化し、それに対して道具をつくっています。 日本は海に囲まれているのに加え、暖流と寒流があり、潮の流れも速いです。台湾ではあまり流れがないため、プランクトンもあまり湧かず、日本のように多種多様な魚はいません。日本に一番近いのはニュージーランドです。日本の鯛よりかなり大きなレッドスナッパーというタイの一種がいて、日本から持ち込まれたタイラバが現地でも「タイラバ」と呼ばれています。そういうことをやって行っています。

シマノの人材・組織としての強みは何ですか?

世界32の国と地域、約50拠点に広がるネットワークがあり、そこに異なる文化を持つ人たちがいて、みんな同じDNAを持ち、自転車と釣りに対して積極的にアプローチをかけて行ってくれているということが、やはりシマノの最高の強みではないかと思います。 このネットワークは、自転車部品事業でも釣具事業でも、これまで何度も非常に大きな助けになっています。いろんな情報も入ってきやすいですし、例えば新しい製品について、年に2回の大きな会議では各拠点から人も帰ってきているので、そこで話をすると、みんな釣りと自転車が好きなので、スムーズに世界中にぱっと広がります。普通の会社だったら宣伝に行かないといけないこともあるので、こう上手くはいかないと思います。各自が各国・各地域でその業界にいて、ネットワークを持っているので、非常に情報が広がりやすいのです。 まだまだ足りないところもありますが、普通に考えると、これ以上の贅沢は言えないほど速いスピードで広がっていると思います。今はインターネット、SNS等で広がることもありますが、あれは基本的にいいとこどりです。シマノには本質を語れる人も多くおられるので、メーカーである限り、それが組織として非常に大きな強みになっていると思います。

ネットワークが大事だ、報連相が大事だと言っても、できていない会社は多いと思いますが、なぜシマノはそれができるのでしょうか?

なぜ広がったのかは簡単な話です。ものを売ったら、後にメンテナンス・保守はつきまとうものなので、そういう意味で拠点があることは大切です。もちろん、うちとは違うサービスをしているところもあるので、これからの時代は変わるかもしれませんが、ここまで広がったのは、うちのアフターサービスネットワークのおかげです。 報連相はうちも足りないところが多くありますが、足りなくても、地域独立型で話が完結できるのです。本社に報告しないといけないこと、例えば、お客様からのリアクションやトラブルなどはエスカレーションすることになっていますが、元々は各地域のリージョナルヘッドクオーターで完結できるように自立していたのです。欧州ならオランダ本社、米国はアメリカ本社、オセアニアでは豪州シドニーの会社で完結するようにしています。 ただ、かなり世代交代してきたので、今はそれを一生懸命束ね直し、ITも活用しながら全ての情報が本社に上がるようにしています。一旦こうして中央集権的なことをして、しばらくするとまた、元々あったネットワークを有効に使いながらリリースする。そしてまた集中と分散、企業の新陳代謝のようなことを繰り返していこうかなと思っています。現在は特に真中にぐっと寄せてきている状況です。

ネットワークを通じて入ってくるのはいい情報ばかりではないですよね?

失敗した情報の方がはるかに多いです。その中には許されるものと許されないものがあります。同じようなミスを何度も繰り返している場合は厳重に注意を行います。また、自転車に乗っているお客様、釣りをされているお客様に多大な迷惑をかけるような失敗、意識が及ぶべきなのに及ばなかった失敗はしてはいけません。特に自転車は命に直接関係するものなので、安易にそういうことをすればご迷惑をおかけすることが分かっているにもかかわらず、そこまで意識が及ばなかったことに対しては、厳しく指摘しますし、私が社長になってからでも何度か、責任を取って自らの報酬について見直しを行いました。

シマノは今どんな人材を必要としていますか?

私が一番大切に思うのは、「好奇心を絶やさないでいていただける方に来ていただきたい」ということです。失敗を恐れずに、といっても「何でもせえ」ということではなく、きちんと論理的にこれは商売として成立すると思われる範囲の中で、失敗を恐れず、少々のリスクを抱えながらも一歩二歩踏み出してくれるような人材が欲しいです。躊躇ばかりしていては前に進まないからです。 そして、何に対しても「なんでやろ?なんでやろ?」と探究心が絶えないということも重要です。第3代社長である私の父は、商いのコツは「飽きない」ことだとずっと言っていました。飽きてきて関心がなくなると、目の前にあるものでも見えなくなります。でも、好奇心がずっとあって関心があると、些細な変化でも気が付きます。案外、ものを見ているときにふと思いつくこともあります。そういうことがなくなってしまうと、その商売をしていても、その仕事をしていても不幸だと思います。だから、そうではない人たちに来てほしいのです。 私も、今日も何度も「なんで?」と会議で聞きました。だから、本当に「何でやろ?」と思える人間であってほしいなと思います。

就活生やシマノ入社を希望する方々へメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、「こころ躍る製品を通して自転車文化・釣り文化を醸成させること」に興味がある方、「人と自然のふれあいの中で、新しい価値を創造し、健康とよろこびに貢献したい」と思われる方に来ていただいて、一緒に切磋琢磨しませんかと申し上げたいと思います。 仕事はお金のため、食べるためにすると言えばそれまでですが、シマノはそれ以上に、やりがい、自分がそういうところで生きていきたいと感じてもらえるような生活空間や仕事の環境は提供します。あまり自然に興味がなくて、例えば、金融業界のような仕事が好きだというような方には、うちの職種や経営のしかたは合わないと思います。 自然の中に身を置いて楽しんでいる方々に対して何か提供できることが楽しいな、そういう人たちが笑顔になっているところを見るのが楽しいな、と思える人たちに来ていただけたら、本人もハッピーでしょうし、私どももそういう人材が来てほしいと考えています。

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